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05 mars 2005

堀江敏幸『いつか王子駅で』

高校時代、親友と呼べる数少ない友人が王子に住んでいた。王子から都電でふた駅、停留所というんだろうか、梶原というところ。梶原銀座なる商店街あり、都電最中を売る和菓子屋があった。都電荒川線にはいくどとなく乗ったが、明治通りの飛鳥山から王子駅にかけての下り坂の風景は圧巻だった。
もんじゃ焼きといえば、いまでは月島が有名だが、王子や町屋に住む友人に聞くとどうやら本場はけっして月島ではないという。そもそも月島にはそれほど歴史はない。ともかくそういった本場議論を声を荒立てるわけでもなく、淡々と話してくれることに得も言われぬ正統感が漂っているのだ。
この本はゆっくりではあるが、人生を歩いていくための乗り物小説だと感じた。都電あり、モノレールあり、名馬あり、そしてぼくの生まれた街にほど近い自動車教習所あり。どの文章も長く、それも乗り物感を助長している。あるいは学者でもある著者のスタイルなのかもしれない。最後、さっそうと200メートルを自分の俊足で駆け抜ける少女がやけに印象的だった。
いくつかの小説がとりあげられているが、そのなかで安岡章太郎の「サアカスの馬」がある。王子に住んでいた友人とぼくはこの小説の舞台になっている高校で出会った。
(2002.1.7)

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