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15 mars 2005

養老孟司『バカの壁』

巨人軍の長嶋茂雄前監督といえば、奇妙な采配でマスコミをにぎわせていた人だ。以前、あるスポーツ番組のゲストで批判的なインタビューを受けた長嶋は、われわれは現場、すなわちグランドで野球を見ている、それは放送席やスタンドで見るのとはわけがちがう、というように長嶋らしい反論をした。長嶋の独特なインスピレーションを疑問視し、いかにも正論的な野球理論を持って見るのもひとつの野球の見方だし、リアルな戦場に立って一球一球、ものすごい緊張感の中で戦う上での判断も野球の魅力のひとつだ。つまり世の中には絶対正しいものなんてない。
私は絶対正しい、と何の疑念もなく思うことにバカの壁があるというのが本書のおおまかな主旨だ。もちろんバカの壁があるということ自体、絶対的な真理ではない。人それぞれ立場立場で主義主張は異なる。それは当然のことだし、共通理解をどうすれば生み出せるかなんてことはこの本には書かれていない。私たちをとりまくさまざまな壁をとりはらう本ではなく、壁があることを意識しなさいという本である。
著者は解剖学を専門としているが、無意識、身体、共同体など現代思想のキーワードの分析、現代世界の宗教的対立、さらには日本の遅れた行政への批判まで実に広汎な視点から人間をとりあげている。その分内容的には浅く、物足りないところも多いが、それも新書を手にする人の立場をおもんばかってくれた著者の心意気なのかもしれない。
(2003.6.21)

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