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18 mars 2005

堀尾輝久『いま、教育基本法を読む』

堀尾輝久氏といえば、氏の博士論文でもある『現代教育の思想と構造』が知られている。教育学を志す人にはうってつけの一冊だろう。そのなかでは戦後教育の理念がどのように生まれてきたかを教育思想の歴史をたどりながら克明に描かれている。単なる反体制的読み物ではない。ややもすれば体制批判、権力批判に終わってしまう教育本とは土台が違うのである。
さて、この本はどうか。さすがにジョン・ロック、ジャン=ジャック・ルソーから解き明かされてはいない。どちらかといえば平易で説得力のある語り口である。官から民へ、構造改革が推し進められるなかで、教育にも市場原理、競争原理が取り入れられようとしている。人間の尊厳をないがしろにしたビジネスライクな教育産業の時代がやってきつつあるのではないかという危惧が本書の前提として書かれている。著者はそれに対し、戦後日本が(その思想の原点はそれ以前から見出されていたのだが)育んできた民主教育、権利としての教育という教育思想の原点に立ちかえって反論する。もちろん教育思想史に精通した著者であるから、それを知っている読者にとって、その説得力はかなりのものだ。
とはいえ、ぼくの感想は、まだこんなことを議論していたのかというのが正直いったところだ。教育を体制側から国民の側に、という当初の基本法の理念が時代とともにねじまげられていることはたしかなのだが、権利としての教育を論じる以前にもっと大切な議論があってもいいのではないかという気がするのだ。それがなんなのか、現時点ではさっぱりわからない。もしかすると壮大な人間論なのかもしれないし、政治家の語るような愛国心なのかもしれない。正直いって、足りないことはなんとなくわかるんだが、なにが足りないのかわからない。
(2003.11.5)

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