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25 février 2008

井伏鱒二『荻窪風土記』

はじめて荻窪に来たのは高校受験のときだったと思う。公立に進学するつもりだったので私立校にはさほど興味はなかった。たまたま姉が通っていた学校が荻窪だったのでためしに受けたわけだ。
当時の荻窪駅前は商業ビルがまだ建てられていなくて、駅ビルができる前の新橋駅前に似ていると思った。ちょっとした市場、みたいな感じがした。
結局、予定通り公立校に通うことにしたので、その後しばらく荻窪駅に降り立つことはなかった。
それから4年後。中央線沿線の大学に通うことになった。そこで知り合ったUさんが荻窪にアパートを借りていて、入り浸るようになる。当時、実家が品川だったので大学までは1時間半ほどかかる。Uさんのアパートからだとものの30分だ。彼にしてみればいい迷惑だったろうが、学期末のレポートなんかを小器用にまとめてやったりすることで多少なりとも下宿代は払ったつもりだ。
Uさんのアパートは天沼2丁目。この本に出てくる寿通り商店街を抜けて八幡通りを阿佐ヶ谷方面に横切ったあたりにあった。6畳と4畳半のふた間でトイレはタンクが木箱に入った古い水洗式だった。風呂はなかったが、すぐ近くに銭湯があったので不便は感じなかった。ちなみにその銭湯は今もある。
Uさんはその前まで南口から15分ほど歩いたところにある3畳ひと間のアパートに住んでいて、そこから高円寺の予備校に通っていた。出身は新潟で、東京に出て荻窪に住みたかったと言っていた。もしかすると文学青年だったのかもしれない。もちろん文学談義なんていちどもしたことはない。
荻窪の街を散策するということもなかった。駅前の喫茶店でありあまる時間をつぶし、インベーダーゲームに興じ、夜になると当時駅前にあったスーパーで叩き売られる弁当を買うか、カップ麺を買うかするくらい。昔入り浸った喫茶店を見かけるとどことなくうれしくなる。
この本を読みながら30年前の記憶がゆるりとよみがえってきた。荻窪界隈に住むようになって15年。まだまだ根が張っていないなって感じだ。

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