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27 février 2013

大道珠貴『東京居酒屋探訪』

若い人たちのことをとやかく言いたくはない。
自分自身がやはり、「近頃の若いもんは」と言われてきたし、そう言われてあまりいい思いをした経験がないからだ。
昨年の春に大学を卒業したA(この場合、Aはイニシャルではなく、ABCのAだ)は、映画が好きだとかとあるテレビコマーシャルを見て感動したとか、ありがちな動機を持って入社してきた。自分の思い描いている仕事のイメージと現実にギャップがあったのかどうかはわからないが、入社直後から「覚え」が悪い。資料をつくるためのアプリケーションの使い方を覚えない。外線電話と内線電話の切替えも覚えない。お使いを頼むといちいち道を訊く。あっという間に同期入社のなかで落ちこぼれていく。掃除とお使い、そしておそらくはそんな有名大学を出ていなくてもできるような資料さがし以外、誰も仕事らしい仕事を頼まなくなった。土日に撮影があって人手が足りないときに応援を頼むとなんだかんだ言い訳をつけて拒否する。
そうこうするうちに、本来なりたいのは作家で同人誌に作品を書こうとしているので長期休暇が欲しいという。年明けはほぼ無断状態で半ばまで休んでいた。
ついこのあいだ、2月の連休から連休明けにかけて、けっこう規模の大きい撮影とその準備があって、人手の足りない状況でもあったので手伝わせることにしていた。そうしたら祖母が病気で危ない状態なので連休は実家に帰りたいという。仕方がないので、そういうことなら様子を見に行ってこい、ただ連休明けは撮影を手伝うようにと言うと、「実は連休明けの2、3日がヤマなんです」と言う。
人のことをとやかくいえないが、この著者はずいぶん偏屈な人だなあと所々で思った。けれども楽しい居酒屋ガイドである。王子の山田屋なんかシズル感たっぷりで思わず訪ねて行ってしまったくらいだ。
さて、連休前にAは社内の全員にメールを出した。「本日をもちまして退社いたします」と。彼が使っていたデスクにはノートPCが置きっぱなし、資料やメモ書き、筆記用具もしばらくそのままだった。

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