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07 avril 2013

大竹昭子『日和下駄とスニーカー』

Doukan
一昨年、毎日新聞日曜版に連載されていた「日和下駄とスニーカー」が単行本になって出版されていた。
永井荷風の東京散歩をベースに同じような構成で東京を歩きなおしてみることで『日和下駄』を読みなおすといった試みでたいへんおもしろかった。いくつかすでに歩いた散歩道もあり、まったく知らなかった道もあった。部分的に歩いたことのある町もあった。
圧巻だったのは、上野から山の手、下町を分ける上野台地の崖沿いを歩くルートだろう。谷中から日暮里、田端、上中里を経て王子に至る道筋である。谷中、根津、千駄木を歩いて散歩した気分になっているのはもったいない。ぜひとも急峻な山の手のエッジから右手に下町を臨みながら北上する旅にトライしてもらいたいと思うのだ。とりわけ上中里から飛鳥山公園にかけて京浜東北線沿いに進む道のり(今はあすかの小径と呼ばれ、北区の観光名所になっているらしい)のひっそりとした空気は散策気分を高揚させる。余計なことではあるが、夕刻王子までたどり着いたら、山田屋で軽くビールを飲むこともすすめたい。
四谷荒木町から住吉町を経て、市谷台町、富久町、余丁町あたりも静かな東京が置きざりにされている。市谷台町にはかつて市ヶ谷監獄があったという。今では大久保方面への通りが拡張され、都市的な景観を醸し出してはいるが、一歩脇道にそれると不思議な空間がひろがっている。余丁町まで行ったら、西向天神も遠くはない。ビル群に隠れてこま切れにされた夕日を楽しむのもまた現代的な風情だ。
夕日といえば、目黒に夕日の岡と呼ばれる江戸時代からの名所があったという。たしかにこの辺りは台地が目黒川によって削られ、山あり谷ありの複雑な散歩道をなしている。田道から中目黒へ尾根道を進むのもいい。高い建物が増えたせいで夕日を楽しむチャンスは少なくなったが、逆に東方向、目黒川の向うの都心を小高い坂上から眺めると赤々とした西日に照らされた建物が見える。
このほかにも伝通院や切支丹坂など茗荷谷あたりや四谷鮫河橋など、著者にそそのかされて、東京をずいぶん楽しませてもらった。


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