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14 mai 2013

川本三郎『いまむかし東京町歩き』

Akapri
一昨年だったか、毎日新聞夕刊土曜日に連載されていた「いまむかし東京町歩き」が単行本になった。
ひととおり読んではいるものの、本になったらなったでもういちど読んでみたいと思う。この手の本に関してはそうとういやしい読書家なのかもしれない。もちろん夕刊連載程度の分量が一単位になっているので読みやすい。むしろ単行本用に尾ひれをつけてもらいたいくらいだ。読み終わってみると物足りなく思ったりもする。
昔の東京を歩くというとだいたいが隅田川あたりから東側だったり、あるいはおおよそ今の山手線内にあたる東京十五区だったりするのだが、川本三郎は特にわけへだてなく、東京を歩く。あるいは下町エリアは歩き飽きたのかもしれない。大森の森ヶ崎や江戸川の妙見島あたりを歩くなんて相当マニアックな歩き人ではなかろうか(東京近郊を歩いた『我もまた渚を枕』もおもしろかった!)。
それから毎度驚かされるのは町歩きデータベースと映画データベース、書籍データベースのリンクである。たしかに昔日の東京をふりかえるのに映画も小説も貴重な資料だ。たとえば銀座は四方を川や掘割に囲まれた土地で橋はところどころにその跡をとどめているが、水路はまったくなくなっている。三十軒堀川や築地川などの風景を知る手だては今となっては映画だけかもしれない。川ばかりではない。古い建物もしかりである。板橋のガスタンクも千住のお化け煙突ももはや映画の一背景になってしまった。今こうしているあいだにも昔の町並みは刻々と消え去ろうとしている。
失われていくものはやはり残念なものである。それでいて映画や小説などでその姿が残されることは喜ばしいことでもある。ましてそれらが名作と呼ばれ、後世に受け継がれていくものであればなおさらだ。失われるものが一方的に惜しいものだとも思えなくなってくるから不思議だ。
先日、小津安二郎監督の「東京暮色」を観た。周囲の景色はずいぶん変わったけれども、雑司が谷のあの坂道は健在だった。

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