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21 novembre 2013

村上春樹『雨天炎天』

トルコという国をさほど意識したことがなかった。
もちろんまったく未知の国というわけではない。学校で習った世界史や地理程度のことは知っている(ほんとうか?)。ヨーロッパとアジアの境界に位置し、庄野真代が「飛んでイスタンブール」と歌っていた国だ。ちなみに首都はイスタンブールではなく、アンカラだ。まちがって憶えていたとしても恨まないのがルールだ。旅行会社の新聞広告はカッパドキアという世界遺産を見に行こうと声高に叫んでいる。まだまだたくさん知っているが、この辺で勘弁してやろう。
本を読むとき、たいていその舞台や登場人物などをイメージしながら読みすすめる。だが残念なことにトルコという国のイメージが脳裏に浮かんで来ない。これまでその国を思い浮かべながら読んだ本といえば梨木果歩の『村田エフェンディ滞土録』くらいだ。このときはトルコというよりアラビアみたいな空間を思い浮かべながら読んでいた。もちろんアラビアのことだってろくに知らない。ともかく自分がいかにトルコと無縁な人生経験を積んできたかを思うとたいへん申し訳なく思う。ついでにいえば、ギリシャも同様で青い海と白い建物と石づくりの遺跡。その程度のイメージしか持っていない。B。G.M.はジュディ・オングだ。
まだ読んでいない村上春樹の本、読みつぶしの旅。今回は『雨天炎天』、ギリシャ、トルコ紀行である。
ギリシャは巡礼の旅、トルコは命がけの冒険物語。読み応えじゅうぶんの旅行記だった。ギリシャ正教の聖地アトスを徒歩で旅する前半はコリーヌ・セロー監督の「サン・ジャックへの道」を思い出させてくれたが、おそらくはそんなのんきな旅ではなかったろう。後半は埃にまみれ、危険と背中合わせの緊張のトルコ一周。
たいていの紀行文は読み手を旅に誘う役割を少なからず持っている。ところがこの本に関してはまったくそういう気にさせない。そこが辺境の旅たる所以だ。
これを読んで、同じ旅をしたいですかと訊かれたら、答は迷わずノーだ。

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